俺様にペンケースは必要ない的な
今日からテストが始まるという子供。
「今までで1番勉強した」と彼は言う。
前回も今回もそうおっしゃるけれども、全くそんな風に見えないところが微笑ましい。赤点を取ると私が学校に呼ばれるため、それだけは何としても避けていただきたいと懇願し、「目指せ赤点回避で」と爽やかにエールを送る。
そんな彼が靴を履いて家を出た瞬間に言った。
「シャーペン一本取って」と。
彼にペンケースという概念はない。
ある時はズボンのポケットからシャーペンが、ある時はシャツのポケットから消しゴムが出てくる。
そう、彼の所有する筆記用具達には特定の居場所がない。自由なのだ。そして自由がゆえに常に行方不明でもある。そんな教育をした記憶はないのだけれども。
カバンの奥底に色ペンやその他色々が沈んでいるのを見たことがある。あれらはきっと毎日教科書と弁当箱に押し潰されているのだろう。お気の毒に。
そんな雑な感じではあるけれども、成績はいつもトップクラスだからまぁ、良しとしよう。
という落とし所があると良いのだけれども、そういう感じでもない。
そうは言っても、元気に登校しているし、弁当もしっかり食べてくるし、上等上等。と言い聞かせながら、
お客様の名言「学校行ったら80点」
を思い出しながら、彼の脱ぎ散らかした洋服を視界に入れないようにコーヒーを飲む、慌ただしい月曜日の朝。